栃木県の益子焼、日用品から「用の美」を追求した民藝品へ
ブログ
2022.07.15
当店にて、Traditional Craft Exhibition|日本の伝統工芸品を集めた展示会を行いました。
近頃、耳にすることが増えてきたように感じる「伝統工芸」。
一般的には日常生活の「用」に役立てられ、手工業によって製造される織物や染色品、陶磁器、団扇や扇子などの品々を指します。経済産業省による5つの要件全てを満たし、経済産業大臣の指定を受けた「伝統的工芸品」は、2022年3月時点で237品目があげられています。
「伝統的工芸品」として満たす5つの要件
・主として日常生活で使用する工芸品であること。
・製造過程の主要部分が手工業的であること。
・伝統的な(およそ100年間以上の継承)技術、または技法により、製造されるものであること。
・伝統的に使用されてきた原材料が主原材料として用いられ、製造されるものであること。
・一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、または、その製造に従事しているものであること。
(参照:経済産業省 伝統的工芸品の法律について)
今回、展示会で取扱させていただいたのは、その中から数品目。
日本に暮らす私たちだからこそ、国内のものづくりの文化や歴史に今一度目を向けて、ものを選ぶ思考をより豊かに広げられる時間になればと思います。
今日は、展示会に並ぶ伝統工芸品の中から、まずは「益子焼」をご紹介いたします。
益子焼が今日まで長く続いてきた道のりを想像しながら、読んでいただけると嬉しいです。
日用雑貨から芸術品へ、江戸の台所で使われた益子焼のこれまで
益子焼が生まれたのは江戸時代の末期。
茨城県笠間焼の修行をした陶工(陶磁器の製造を職業とする人)が、現在の益子町に築いたことがはじまりとされています。
藩の援助を受けて、水がめや壺などの日用品として焼かれ、江戸の台所で日常的に使われていました。
一時期は国外へ輸出するようにもなり、その需要の高さから粗悪品の乱売が目立ち信用を失ってしまう時代があったり、一般家庭で使用される燃料が木炭から石炭ガスへと切り替わった年代には、台所用品として使われてきた益子焼が金属製のものに取って代わられたりと、製造が一時的に中止されるほどの不況に陥ったこともあったそうです。
そんな中、昭和時代に入ると、益子に定住した陶芸家であり民藝運動を提唱する濱田庄司によって、花をいける花器や食卓用品など「用の美」が見出され、「日常生活で使われる芸術品」としても認められていきます。
濱田庄司の思想が、益子に住む多くの陶芸家たちに影響を与え、民藝運動の高まりとともに、世の中へ広く知られるようになりました。
高度経済成長期には、都市化が進む反面、伝統文化や人々が故郷へ寄せる思いの強まりがあり、益子を目指す作家の増加、幅広い世代の陶芸家たちが多種多様な創作を広げたことで、益子焼の文化はさらに発展を遂げます。
春と秋、陶芸の町 益子の美しい里山とうつわを楽しむ陶器市
昭和54年に、国の伝統的工芸品に指定された益子焼。
陶器の産地として、国外でもその名を知られている益子は、なだらかに広がる田畑や小高い山々に、いちご、柿や葡萄など四季の彩りにも恵まれる町。
伝統的工芸品に指定される前の昭和41年からは、毎年春と秋に「陶器市」が開催されます。
古くより知られる伝統的な益子焼や、若手からベテランまで様々な陶芸家の作品たち、うつわやカップなど日用品から美術品まで集まる陶器市。益子の大きなお祭りとして定着し、例年賑わいを見せています。
益子焼が続いてきた背景をたどると、焼きものにのめり込む陶芸家たちの進取の気性と、益子の良質な陶土から作られる日用の美しさに魅せられた人々の、親しみと愛情を感じられるように思います。
うつわは食べ物を美味しくする調味料
益子焼の特徴はなんといっても、陶土の粗い質感を活かした、ぽってりとした厚みのある形。
地元の釉薬(素焼き段階の表面に塗っておく薬品)を用いた、深みのある色合いと艶やかさをもつ光沢の肌は、栃木県益子町のおだやかな自然の空気を纏っているみたいです。
うつわを手におさめた時、つやっとした表面と土の触り心地が、なんだか懐かしいような、ほっと安心した気持ちにさせてくれます。
土の、このずっしり感。
ほうれん草のおひたしや、にんじんしりしり、彩りがきれいな野菜料理を盛り付けたい気分です。
自然の重みのあるうつわが、食を一層美味しくしてくれる気がします。
長く使えば、使うほど手によく馴染み、土の暖かさが伝わってくるうつわ。
今回の展示会では、昔からの益子焼の良さを継承しつつ、現代の生活様式に寄り添い進化した、モダンな益子焼のうつわが並びます。
Traditional Craft Exhibition
会期
2022年7月23日(土) - 7月31日(日)
営業時間
平 日:11時 - 18時
土日祝:10時 - 18時
場所
STAYFUL LIFE STORE
東京都三鷹市下連雀1-16-1(井の頭公園前 / ジブリ美術館すぐ近く)
益子焼を実際に手に取り肌に触れてみて、その重みや肌合い、人の手で作られる温度を感じてお選びいただけたらなと思います。
みなさまのご来店、お待ちしております。
アーカイブ記事
Archive