越中和紙と過ごす、みやびやかな夏。
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2022.07.22
当店にて、Traditional Craft Exhibition|日本の伝統工芸品を集めた展示会を行いました。
会期中に、取り扱いのあった伝統工芸品のご紹介。
今回は、これから夏の季節をともに過ごしたい「越中和紙」について触れていきます。
栃木県の益子焼、福岡県の久留米絣のことも、ブログにてぜひ知っていただけたらと思います。
【Traditional Craft Exhibition 関連ブログ】
・栃木県の益子焼、日用品から「用の美」を追求した民藝品へ
・染糸を手織りし文様を描く、洗うほどに美しくなる久留米絣。
・時代とともに形を変えて。米沢緞通のチェアラグを知る。
極めて古い歴史を持つ、税としても納められていた和紙
越中和紙。
起源は定かではない中で、奈良時代に書かれた「図書寮解(ずしょりょうげ)」「正倉院文書(しょうそういんもんじょ)」などの古文書の中に、紙の産地としての越中が記述されています。
これにより、奈良時代にはすでに紙が生産されていたと考えられているそうです。
平安時代に書かれた「延喜式(えんぎしき)」には、税に納める作物として「越中の和紙」の記載が。今回展示会に並ぶ伝統工芸品の中でも、ひときわ古い歴史を持つ品になります。
富山県の朝日町、八尾町、平村周辺の3つの生産地で製作される「越中和紙」は、五箇山和紙(ごかやまわし)、八尾和紙(やつおわし)、蛭谷和紙 (びるだんわし)の総称。
産地ごとに少しずつ用途が異なるところが特徴のひとつです。
和紙が発展したのは江戸時代。当時、富山から日本全国へと盛んになった薬の配置販売がきっかけとなり、薬の包み紙として八尾和紙が使用されています。薬包紙(やくほうし)や当時の顧客名簿、薬売りが持ち歩く鞄の素材などにも。
五箇山和紙は、加賀藩の御料紙(藩主が公式儀礼に用いる紙)として使用され、和紙の需要と品格が高まっていきました。
植物のことを知りつくした昔からの技術
和紙の原料に使われるのは「楮(こうぞ)」というクワ科の植物、じんちょうげ科の「雁皮(がんぴ)」や、「三椏(みつまた)」。
そして、均一に紙を漉くためにアオイ科の「トロロアオイ」は欠かせません。
トロロアオイの根を砕き水に漬けてできる「ネリ」は、まさにとろろのように粘性があり、紙漉きの際、水中で繊維同士をくっつかないようにする働きがあります。
一枚一枚丁寧に漉かれた紙は、そのまま積み重ねられても不思議とひっつくことはないそう。
必要なところにのみ適した効力を発揮するからこそ、繊細な和紙の製作に「ネリ」は必須の原料です。
今も変わることなく使い続けられている原料には、きちんと理由がありました。
長く受け継がれる技術のもとをたどると、先人がいかに植物の性質を見抜き、理解していたのか、その追求心を思い知らされます。
丈夫さを携え、品を纏って過ごす夏のひととき。
薬の包み紙や名簿帳、鞄や障子紙などの生活道具にも使用されるほど丈夫な越中和紙。
伝統的な製法や製品が受け継がれる一方で、現代の暮らしに寄り添った新しい紙製品の開発にも目を見張るものがあります。
今回の展示会では、この夏、ぜひ越中和紙を手に取っていただけたらと、夏の風物詩たちがお目見えです。
軽やかな質感の中に、温かみある風合い。歴史の長い越中和紙だからこそ、日本の夏に親しまれてきたプロダクトと相性が良いのだなと思います。
昔ながらの技法に、ほんの少し今の気分を添えて。
グラフィックデザインが掛け合わさり、世代の垣根を超えて、人の手で作られるものが好きな人にこそおすすめしたい伝統工芸品です。
Traditional Craft Exhibition
会期
2022年7月23日(土) - 7月31日(日)
営業時間
平 日:11時 - 18時
土日祝:10時 - 18時
場所
STAYFUL LIFE STORE
東京都三鷹市下連雀1-16-1(井の頭公園前 / ジブリ美術館すぐ近く)
展示会商品は、お買い求めいただくことが可能です。
みなさまのご来店、お待ちしております。
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