染糸を手織りし文様を描く、洗うほどに美しくなる久留米絣。
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2022.07.15
当店にて、Traditional Craft Exhibition|日本の伝統工芸品を集めた展示会を行いました。
前回につづき、展示会で取扱させていただいた伝統的工芸品のひとつである「久留米絣(くるめがすり)」をご紹介いたします。
伝統的工芸品について、栃木県の益子焼についてのブログも、まだご覧になっていない方はぜひ。
【Traditional Craft Exhibition 関連ブログ】
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・越中和紙と過ごす、みやびやかな夏。
・時代とともに形を変えて。米沢緞通のチェアラグを知る。
12歳の少女の探究心をくすぐる、粗削りな美しさを持つ斑点
江戸時代の後期、当時12歳ほどだった井上伝という少女の探究心により生み出された「久留米絣」。
藍染の着物を何度も洗うと、色が抜け落ちて白い模様のような斑点ができます。
この斑点を調べるべく糸を解き、現れた糸と同じように、新しい糸を染めたことがきっかけだったそうです。
色が抜けた白黒の糸にならって、白糸をくくり、藍汁に染めて乾かし、くくった糸をゆっくり解いていく。
これを機にのせてみると、白い斑点が布面に広がり、不均一で不思議な魅力が湧き出す、新しい織物が生まれたのです。
この織物は、ときおり掠れたように見えることから「加寿利(かすり)」と名付けられました。
糸も機械も生きている、機嫌と向き合う職人の手仕事
久留米絣の技法は、1957年に国の重要無形文化財に指定され、1976年には伝統的工芸品に指定されています。
柄のデザインを行う図案作り、経糸(たて糸)と緯糸(横糸)の準備や染色、そして「くくり」。すべての工程において、職人の技が必要です。
久留米絣の「絣(かすり)」とは、あらかじめ先染めした糸を使って作る織物のこと。デザイン図案に沿って、染めたくない部分に糸を巻きつけ、緻密にくくると、きっちりと染め分けられ、より均一で繊細な文様を表現できるそうです。
しかし、いくら均一に図面通りにくくっても、糸の強度の違いやくくるときの力加減、糸が伸び縮みしたり、染料の染み込み具合によって、ところどころが不均一になることがあります。
50年来の職人さんも、なかなか糸がいうことを聞いてくれない時があるというほどに、糸は生き物なのだなと感じられます。糸と、糸を扱う機械や人の調和により、その時にしか生み出せないかすりやゆらぎが、久留米絣独特の魅力なのです。
なかなかプリントでは表現できない、織物の生きた表情にこそ、井上伝さんは心惹かれていたのかもしれません。
久留米絣の歴史とともに、現代をかろやかに過ごす
綿素材ならではの良さを持つ久留米絣は、通気性が良いため夏は涼しく感じることができ、冬は内側の熱が放出されにくいため暖かく感じられます。
木綿で丈夫な生地は、洗うほど馴染んでいく形と風合いは柔らかく、美しく。モダンな印象を磨き上げながら、長く愛用してこそ良さの増す日用品です。
季節を選ばず、毎日取り入れることのできる久留米絣。
今回の展示会では、トートバッグやハンカチといった現代の日常にさらりと取り入れていただけるプロダクトが並びます。
福岡県・久留米の町の特徴をグラフィックのデザインに落とし込み、久留米絣の文様として織られた生地には、くすっとできる少しのユーモアと、誰かに話したくなるようなエピソードが隠されていたり。
機能性と、工芸が生まれ親しまれてきた歴史や地域、デザインが交わる今の久留米絣を、ぜひ手に取って見てみてください。
Traditional Craft Exhibition
会期
2022年7月23日(土) - 7月31日(日)
営業時間
平 日:11時 - 18時
土日祝:10時 - 18時
場所
STAYFUL LIFE STORE
東京都三鷹市下連雀1-16-1(井の頭公園前 / ジブリ美術館すぐ近く)
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